自由度の高さは空の高さではなく壁の高さだった – プロジェクトスパーク終了によせて


Xbox One/Windows対応ゲーム「プロジェクトスパーク」のオンラインサービスが日本時間2016年8月13日の朝に終了しました。引き続きオフラインで自分のゲームを作成はできますが、世界中のプレイヤーとシェアするという魅力を失った今、とりあえず終了と言っていいと思います。

2013年のTGSでプロジェクトスパークの解説をしたDavidさんのツイート

日本では2013年の東京ゲームショウで初お披露目でした。そこから惹かれてクローズドベータ、オープンベータに参加してきました。逆に製品版になった時期ぐらいから日本でのXbox Oneローンチとともに大量にゲームが発売されたこともあり、プレイ時間は減ってしまったわけで、あまりこれといった形になるゲームを残せなかったのは残念です。ともあれ、このサービス終了のタイミングでこのゲームに感じたことを振り返ってみたいと思います。

 

■知的好奇心への挑戦

 

プロジェクトスパークの楽しさの一つは最初にも書きましたがやはり世界中のプレイヤーとゲームを作ってシェアすること。それ以上に一番の魅力だと感じたのは、シェアされたゲームを自由にリミックス(改変)できるということ。作ることのハードルはなかなか高いのですが、だからこそほかの人のゲームをプレイするのみならず、中身を編集で開いてみて、そのコーディングやオブジェクトの組み合わせなどの独創性に対して素直にすごいと思えるわけです。まるで時計を分解したときのような知的好奇心を刺激させるゲーム、それはこれまでのゲームにも、そして今出ているゲームにもなかなか無いものだと言えるでしょう。

とはいえ、サービスが終わってしまうことにはやはりいろいろと課題があったことも確かです。このコラムではプロジェクトスパークが残した3つの課題を挙げたいと思います。

 

■高すぎた自由度

 

プロジェクトスパークのうたい文句は想像力次第でなんでも作れるということで、実際にコミュニティではプラットフォーマーやシューティング、テーブルゲーム、アクションRPGまで様々なジャンルのゲームが作成されていました。しかし、澄み切った空のように思われたこの自由度の高さは、実際手に取ってみるとどう使いこなせばいいのか、壁の高さでもあったのです。

例えばRPGツクールでは基本的にRPGを作るためのツールです。逆に言うと、用意されているパーツや専用のツールを使えば、素人でもある程度RPGとして形になるものを作れます。

しかし、プロジェクトスパークでRPGを作ろうと思えば、RPGツクールで用意されているようなキャラクターのステータスやレベルの仕組みも自分で一から作りこまなければならないし、武器や魔法、世界、キャラクター…どれ一つとっても自分で一から細かく作りこまなければなりません。RPGツクールも完成には根気がいりますが、プロジェクトスパークははるかに根気がいることは明らかです。

確かに単純なアクションアドベンチャーなら簡単に作れます。とはいえ、例えば開発元がショーケース的に作成したコンカーなどのキャンペーンゲーム。これらのゲームには見づらいカメラワークやもっさりしたアクションという難点を感じたものでした。しかしながら、こうした難点も、実際のところプロジェクトスパークに用意されているパラメータなどを調整すればある程度解消はできるものでした。自由度が高いからこそ、ちょっとしたことでも作りこまなくてはお店で販売されているゲームのような満足のいくものが出来上がらない… そうした壁の高さとともに、徹底した細かい調整を行ったうえで販売しているゲーム開発者の努力に頭の下がる思いでした。

 

■不安定さを残したローンチ

 

二つ目は、リリースを急いだのか動作に安定性を欠いた状態でリリースしてしまったこと。前評判で期待を集めていたのにクラッシュやバグ、検索システムの不十分さなどで失望して去っていく人もいました。

これはプロジェクトスパーク以外の今世代のゲームでもよくある話でした。オンラインのマッチングがつながりにくい、オープンワールドで不安定な挙動を見せる… それぞれのゲームの開発陣は発売後のフィードバックをもとに改善を行いましたが、そうした努力もマイナスからゼロに戻すための努力で、なかなか一度ついたイメージを覆すのは難しかったように感じます。

この点は、今にして思えば自分もベータテスターという立場からもっと厳しく評価、フィードバックしなければならなかったのではと思います。深く関与したことで愛着を感じてバグも許容してしまったり、慣れという点から面倒な操作性に違和感を感じなくなったり遅い動作もそのように感じなくなったり… 今後のプレイヤーとし反省しなければなりません。

 

■英語のみに縮小したサポート

 

最後にもう一つ。これは日本の問題かもしれませんがやはりサポートが英語に限られたということ。コミュニティの言語が英語に限られるのは仕方ないとしても、UI周り、さらにはコードもすべて英語になってしまったことで、ゲームを作る難易度が飛躍的に高くなってしまったのは初心者や新規プレイヤーにとって厳しいことでした。既存のプレイヤーである自分も、新規機能を十分に理解することがかなり難しかったです。せっかくオンラインランキングやゲーム世界のリンクという更なる拡充があったのに、それを十分理解してプロジェクトスパークの進化についていくことができなかったのは残念でした。

この背景には一本のゲームデータに複数の言語データを乗せるマルチランゲージに伴う技術的な問題もあったようですが、これも技術の向上によって今後のゲームで同じようなことがないようにしてほしいと願います。

 

■真の次世代ゲームへの期待

 

何はともあれ、プロジェクトスパークは今後オフラインで気が向いたときにちょこちょこと触るという形になりそうです。

一方でプロジェクトスパークのサポートを終えた開発元のチームダコタのメンバーはみなそれぞれ新たな道を歩いているようです。みんなが驚いた2015年E3ブリーフィングでのマインクラフトのHololense対応デモ、あのプレゼンテーションを行ったSaxsさんはプロジェクトスパークの開発を指揮していました。

Xbox Oneローンチ前、期待に満ちていた時にTGSで初めて見たプロジェクトスパークに感じたような、旧世代の延長線上から脱却した次世代を感じさせるゲームを産み出せるよう、皆さんの今後の活躍を祈念してなりません。また、そうしたゲームをサポートできるように、コミュニティの一員として何ができるのかを今後も考え続けていきたいと思います。